創業時の資金調達には何があるか?

「さぁ事業をはじめよう!」という時に、必ず必要になってくるのが、目先のおカネ、つまり事業資金になります。創業時は特に、資金が不足しがちですので、様々な手段を駆使して資金を調達する必要があります。

ところが、いざ調べてみると、「難しい言葉がいっぱい!」。
「融資?出資?・・・」
「補助金?助成金?・・・この違いは何?」
こんな迷路に迷い込んでしまう方が多いのではないでしょうか?

そこで今回は、融資、出資、補助金、助成金の違いと、その特徴について書いていきたいと思います。

融資、出資、補助金、助成金の大まかな違いとは?

融資、出資、補助金、助成金と、紛らわしいこれらの言葉ですが、まずは大まかな意味や違いをざっくりとイメージで掴んで頂きたいと思います。

融資とは?

まずは融資ですが、これはおカネを借りることを意味します。とは言っても、マチ金や闇金から借りるわけではありませんので、ご安心を!
また、通常は知人や親戚から借りることも融資とは言いません。

消費者金融など、金利が高い所から借りることも、通常は創業時の融資としては考えませんね。だから、あまり怖がる必要はありません。

創業時の資金調達を考える場合、銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関からおカネを借りることが一般的です。その他、後述しますが、日本政策金融公庫というところから融資を受けるのも王道ですね。

もちろん、借りたものですから、返す必要があります。これを「返済義務」と言います。

出資とは?

出資とは、株主などの投資家におカネを出してもらうことを言います。自分でおカネを出すことも出資と言いますが、今回は資金調達のことをお話しているので、第三者におカネを出してもらうという意味合いですね。

「・・・てことは、おカネをもらえるってこと!?」

まぁ、そう言えなくもないのですが、ちょっと違います。
ただでおカネをもらえるわけはないので、いくつか条件があります。

まずは出資してもらった割合に応じて、議決権を渡すのが一般的(※)です。
例えば、その会社の資本(会社を運営する元手のおカネ)のうち、50%を出してもらったなら、その会社を50%所有されているということになります。

ですから、重要な決定をする時、その人には50%の発言権があるわけです。
まぁ、投票権を50%渡しているみたいなものと考えて下さい。

それから、配当を払う必要があります。
出資している側からすれば、おカネを出している見返りを期待しているわけで、それが配当です。要は、1年間ビジネスを運営してきた中で、儲かったおカネの一部を分け前として下さいねってことです。

このようは出資者はベンチャーキャピタルだったりエンジェル投資家だったりしますが、もちろん慈善事業ではないので、なんの見返りもなしにおカネを出してくれるわけではありません。

まずは、将来性のある新しい事業に投資したいという気持ちが一番にあるでしょうが、その他に配当をたくさんもらいたいとか、儲かるビジネスのオーナーでありたいという思惑があります。

さらに、「その株を高く売却したい」とか、「上場させて莫大な利益を得たい」という思惑があったりします。

色々と思惑や条件があるにせよ、この「出資」というものは返す必要がありません。つまり、返済義務がありません。

※普通株式の場合

補助金とは?

さて、わかりづらいのが、この補助金の話です(笑)。

補助金とは、ざっくり言うと、国からおカネをもらえる制度です。
主に経済産業省が運営していることが多く、その財源は税金です。

したがって、新規事業や創業促進、その他さまざまな国策を促進する手段として使われます。つまり、国の政策目的に合った事業を応援するために、税金を使って資金援助をするというものになります。

ここで注意したいのは、補助金というものは、なんの条件もなしにおカネがもらえるというわけではないことです。

”補助金”というくらいですから、あくまで使用した経費を”補助”するということになります。つまり、既に使った経費に対する何割かを、後から補助してもらうということです。

後から補助してもらうとは言え、使った経費の一部を国から援助してもらえるわけですから、お得です。そしてこの補助金は、原則として返済不要です。

助成金とは?

最後に助成金です。前述の補助金と似ていて紛らわしいのが、この助成金です。
助成金も国からおカネがもらえる制度という意味では、補助金と同じです。こちらも返済不要ですので、その点でも補助金とよく似ています。

一方、補助金との違いは、主に厚生労働省が運営していることが多く、その財源は雇用保険などの社会保険料です。

したがって、助成金を支給する目的も、雇用増加や人材育成の実施、労働環境の改善などに対して支給されることが多いです。

注意点として、雇用保険などの社会保険料を財源としていますので、社会保険に加入していない事業者は基本的に受給することができません。

各資金調達手段の特徴を整理すると・・・

ここまで見てきたように、資金調達といっても、それぞれの手段でだいぶ使い勝手が違います。
そこで、簡単にその特徴をまとめてみましょう。

まず、返済義務があるものと返済義務がないものがありましたね。まとめると・・・

<返済義務のあるもの>

  •  融資

<返済義務のないもの>

  •  出資
  •  補助金
  •  助成金

こう見ると、融資以外は返さなくていいので、お得な感じがします。しかし、おカネを受け取るタイミングで考えると、またちょっと使い勝手が異なります。

<使う前におカネを受け取るもの>

  •  融資
  •  出資

<使った後におカネを受け取るもの>

  •  補助金
  •  助成金

どういうことか、少し詳しく説明しますね。

補助金は何に対し、いつもらえるの?

融資と出資は、使い途は問わず、あなたの事業におカネを出してくれます。それを何に使おうが、基本的に自由なわけです。

一方で、補助金と助成金は基本的に使用目的が決まっています。

まず補助金ですが、国策に合った事業を応援することが目的です。

例えば、製造業でIT導入が遅れており、労働生産性が低いという問題があったとします。そこでITを導入して、製造現場の生産性を高めようという企業に資金補助するわけです。

補助金を受ける企業は、まず国に計画書を提出し、どのような目的にいくら使うかを申請します。

もちろん、見積書、請求書、領収書を添付します。
したがって、あくまで使ったおカネについて、そのうちの何割かを後で補填してもらうという仕組みなんです。

補助金が入金されるのは、おおよそ計画申請から1年~1年半後だと考えて下さい。

助成金は何に対し、いつもらえるの?

一方、助成金は主に従業員の雇用問題の改善に対しておカネを支給するというものになります。

例えば、キャリアアップ助成金。

これは正社員を増やそうという政策目的達成のための助成金です。
したがって、非正規雇用の社員を正社員転換すると助成金がもらえます。

この場合、使った経費を国に負担してもらうわけではないので、補助金とは異なりますね。
しかし一定期間、社員を非正規雇用として雇い、その後に正社員として雇用してから申請しますので、やはり入金は1年~1年半後と考えて下さい。

その他、社員の教育訓練に対して、その研修費の一部を国が補填してくれるといったものもあります。

こちらは先に支払った費用の一部を、後から補填してくれるという意味で、前述の補助金と似ていますね。

利用上の注意点

ここまでで、補助金と助成金は

  1. 申請から入金まで時間がかかる
  2. 使い途が限られている又は受給できる要件が決まっている

という特徴を見てきました。

さらに、その他の注意事項を補足説明したいと思います。

まず補助金ですが、国の政策意図に沿った事業計画でなければ、受給できません。さらん、年度ごとに予算が決まっており、予算を使い切ってしまえば、そこで募集が終了してしまいます。

では、早い者勝ちかというとそうではありません。
事業計画の内容を厳しく審査され、合否が決まるのです。

つまり、

  1. 事業計画の内容が素晴らしいこと
  2. 早い者勝ちでもある

という2つの側面があるのです。

また、募集から締め切りまでが非常に短期間であるという特徴があります。
おおむね、募集期間が1ヶ月程度であり、突然発表があり、すぐに終わってしまいます。

なお、合格率(これを採択率といいます)は、補助金の種類や年度によって異なりますが、10%~40%と言われております。
ですから、狭き門なんですよ(笑)

一方、助成金の方は要件さえ満たしていれば、ほぼ確実に受給することができます。

基本的に、その制度がある限り、募集期間が定められているわけではないので、短期間ですぐに申請しなくてはいけないというものではありません。

ただし、申請するための書類を準備するのはかなり大変です。ボリュームも多いですが、長期間にわたって整備しなくてはいけないものもあり、書類整備が大変です。

一般的には、社会保険労務士という専門家に申請を依頼することが多いですが、その報酬はそれなりに高額になることがあるので、よく検討するといいでしょう。

資金調達手段の選択基準

さて、それでは資金調達手段としては、どのような基準で検討すればいいのでしょうか?

まず、補助金と助成金については、入金までに長期間を要するので、創業時の資金調達には向きません。

ただし、返済不要のおカネを国から援助してもらえるので、下記を踏まえた上で検討すると良いと思います。

補助金の検討項目

前述のとおり、補助金は必ずもらえるものではありません。
しかし、補助金のもうひとつの特徴として、「合格通知を受けた後に支出した経費が補助対象となる」というものがあります。

したがって、事業計画を提出し、「合格したら経費を支出する」、「不合格だったら支出しない」という方法が取れるのです。

その意味では、ご自身のビジネスモデルに合致した補助金があったら、積極的に取り入れると良いと思います。

なお、補助金の情報は下記のようなサイトに掲載されてますので、こまめにチェックすることをおススメします。

ミラサポplus
https://mirasapo-plus.go.jp/subsidy/

助成金の検討項目

まず最大の特徴は、雇用保険などの社会保険料を財源としていることです。

したがって、長期的に社員を雇用する予定がない限り、受給する意味がありません。

もちろん、従業員の給料は固定費として会社の財務を圧迫しますが、それ以上に社会保険料の負担が重いことを考慮しなくてはいけません。

加えて、社長とその家族だけの会社の場合、通常は雇用保険に加入できないため、助成金が受けられないことが多いという点にも注意が必要です。

出資の検討項目

さて、出資の場合はどうでしょうか?

出資は返済不要という点で、補助金・助成金と似ています。しかし、すぐに入金されるということから、利用しやすいように思えます。

しかし、出資を受けるハードルは非常に高いです。
AIなど、話題性の高い分野で画期的なビジネスモデルがなければ、なかなか出資を勝ち取ることは難しいと考えて下さい。

さらに、出資を受けるということは、出資者に株主になってもらうことなので、経営に口を出されたり、様々な契約を結ばされたりすることもあります。

そこで出資が向いている場合とは・・・

  1. 非常に魅力的なビジネスモデルであること
  2. 事業計画が緻密であり、それを実行する能力が充分に備わっていること
  3. 株主の出資比率に注意を払い、出資比率と調達したい資金のバランスが取れていること

このような場合、出資は魅力的な資金調達手段になると思います。

融資の検討項目

上記の出資と同じく、すぐに入金され、かつ使い途の制限や受給要件がないことから、融資は非常に優れた資金調達手段といえます。

先に述べた補助金や助成金の入金が遅いことを鑑みると、補助金や助成金が入金されるまでのおカネを融資で用意し、当面の資金繰りに充てるというのも有効な手段です。

デメリットは、もちろん返済しなくてはいけないということと、金利がかかるということです。

もちろん返済できなくなれば、そのリスクを負うことになります。

そこで、融資が向いていない方は、

  1. 返済していく自信がない
  2. 事業計画が不透明である
  3. 借金することに精神的ストレスを感じる

などの場合です。

どの方法も一長一短です。
あなたのビジネスに向き・不向きがありますので、様々な要素を鑑みて、ベストアンサーを出すようにして下さい。